私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

オレはうつ病なのか?と言い出した不倫夫

私が、
夫の不倫顛末について、
詳細を聞き出そうとすると、
夫はしおれる様に元気が無くなった。

顔から血の気が引き、
精気が無くなり、
目が虚ろになり、
反応が鈍くなった。

このところ、
こういう状態になってしまうことについて、
夫は私に問いかけた。
「オレ、うつ病かな…?」

大抵の時間は元気でしょ?
元気が無くなるのは、
こんな話をしている時だけでしょ?
だからうつ病ではないよ?

私がそう答えると、
そうかぁと、
下を向いた顔を、
納得してないように少しだけ傾けた。

その様子を見た私は、
これがうつ病なんてありえない…と思い、
沸々と嫌な気持ちが広がった。

うつ病真っ只中だった私から見て、
私と同じ病だとは到底思えない。

私の場合は…

力が入らないから、
大きな声が出せないし、
気合いも入れられない。
幸福感がわからないから、
楽しいという感覚が得られない。
仕事や家事は涙を浮かべたまま、
黙々と最低限だけやる。

四六時中そんな感じだ。

風に煽られながらも何とか墜落を免れ、
低空飛行が続けている、
という心許ない感覚だ。

一方夫は、
決まった時間に目覚め、
元気よく出勤し、定期的にジムに通う。
食欲も以前から変わらず、
飲み会は喜んで参加する。

いつもはこのように元気なのだが、
私が夫の不倫顛末について聞くと、
見る見る間に元気が失くなり、
うつ状態に突入するのだ。

急性ストレス障害ASD)だと思った。

その頃の夫は、
そんなこんなで、
不倫の詳細を聞き出すことができなかった。

これが、
死者が出た交通事故加害者だったら、
どうするのだろうか。

警察が事情聴取する度に、
夫はうつ状態に陥り話が出来なくなる。
弁護士が「あまり急かさないで」と間に入り、
精神科へ入院することになる。
「今は話が出来る状況じゃないので」
という理由で聴取は捗らず、
被害者家族をやきもきさせることになる。

被害者家族からしてみれば、
とんでもない話だ。

どうして事故は起こったのか、
どういういきさつがあったのか、
なぜ命が奪われてしまったのか。

惨たらしい現実なのだろうけど、
事実を知ってきちんと向き合いたい。

目撃できなかった事故をかみ砕いて理解し、
少しでも死者に寄り添って、
しっかりと弔いたい。

もし夫が加害者ならば、
そういう被害者家族の希望に
添うことができないということなのだ。

しかし、
実際に夫が仕出かしたことは、
ただの不倫。

自分の意思で、
10年近くも続けてきたこと。
不慮の事故ではない。

不倫がバレたら、
妻に詳細を話す義務があることくらい、
わからなかったのか。

不倫相手女にしたって、
その男は、
不倫がバレた時のイザコザも想定して
不倫をしていると思っていただろう。

窮地に立たされてもいい、
オマエと不倫するからには、
強い覚悟がある!
矢面に立たされることになっても、
オマエと不倫をすることが、
オレの生き方だ!!

…と男は思っている、と女は思っていた。

しかし、
夫はそうではなかった。

汚い水溜にユラユラ浮かんでいる
ボウフラと大差ない。