私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

既婚男とのやり取りを悔いている、独身不倫女

私の夫と不倫していたその独身女は、
過去の不倫中のやりとりで、
とても悔いていることがある。

「オマエが一番」
とメールでその男に言われた時、
その独身女はその言葉をスルーしたことだ。

それまで、その女は夢見ていた。
その男が自ら、
「妻と離婚するから、
オマエと一緒になりたい」
と言い出すことを。

その男が、
今の家族とキッパリ決別し、
「オマエを愛している」
とその女の前に白馬に乗って現れるのを。

だけど、
その男の告白は、
その独身女の描いたものとは程遠く、
だいぶ寸足らずに思えた。

しかもその告白の前後のやりとりからして、
愛に満ちたものとは思えなかった。

「他の商売女に乗り換えようかと思ったけど、
やっぱりオマエが一番」
と言ったのだから。

それまで、
その女が競っていたのは
その男の妻だと思っていたけど、
実は商売女だった様子。

だとしたらその男にとって妻は論外で、
全く頭にないということなのか。

その男は、
次なる妻の選定に迷っているのか。

その女はどう応答すべきかわからず、
結果、
その男の告白メールをスルーした。

そしてその2ヶ月後、
妻にその告白メールが見つかり、
不倫は強制終了となった。

その女は、
あの時ワタシがあのメールに
ちゃんと答えていたら…
理想に囚われず、
素直にカレの言葉を受け取っていれば、
今頃ワタシとカレは結ばれていたのに…
と悔やんでいるのだ。

あの時、
恥ずかしがり屋のカレが、
やっと勇気を振り絞って告白してくれたのに、
ワタシはそれを無下にしてしまった…
と後悔しているのだ。

その男の恋心を無視し、
可哀想なことをしてしまったと、
その男のことを不憫に感じているのだ。

その男に、
幸福をあげることが出来なかったことを、
申し訳なく思っているのだ。

だからその女は、
人生の大切な分岐点を、
自分のエゴで無駄にしてしまい、
一緒になれなかったカレとワタシは不幸だ、
と思っているのだ。

ワタシが正義で、
妻が不義だと思っているのだ。

正義が敗者になってしまった現実は、
なんて悲しくやるせないのか、
人間社会の残酷さが身に染みているのだ。

だけど、
その女が感じ取った「現実」は、
残念ながら「事実」ではない。

その男の事実は、
その女を商売女と同列と位置付けていた、
ということ。

しかも、
「オマエが一番」
というメールを書いた記憶がない、
ということ。

心が病みぎみプラス酩酊状態からくる、
出任せの一筆だった、
ということなのだ。

しかしその女は、
今もその言葉に拘り、
その言葉を胸に抱き、
その言葉を何度も反芻し、
その言葉を宝箱に納め、
2人とも救えなかったことを悔いて、
ずっとあの地点にいる。

自分の言動で、
その男の妻に苦痛を強いたことなんて、
全く問題ではないのだ。

その女の問題は、
愛し合っていたのに引き裂かれたと怒り、
ロミオとジュリエット効果」に
どっぷり浸かって出られないことだ。

そして、
正義を振りかざしても、
現実と折り合って生きることにならず、
世の中の「あわれ」を感じている。

吹きっさらしで北風を受けるように、
悔しさと悲しさに揉まれている。

事実と異なるものに振り回され、
勝手に打ちのめされている。