私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

複雑性PTSD夫の不倫は、必然だったかもしれない

複雑性PTSDの私の夫は、
心が健康な人よりも、
不倫することが簡単だった。

心が健康な人は、
「不倫」自体が、
精神的観点から、
遠くのもののように感じる。

不倫への誘惑が、
自分の身に迫ったとしても、
今の生活を守るため、
誘惑をはねのける気持ちがある。

心が健康な人は、
自分の立場の意味を理解し、
今後の展望を健康的に構築する。

しかし、
心が不健康で、
精神的に病んでいた私の夫は、
上に挙げたこととは
まったく逆の状態だった。

周囲の人が不倫をしていたこともあり、
特別なものだという認識は無かった。

家族の気持ちを慮ることは無く、
今後の展望を構築する、
という考えも無かった。

とりあえずの承認欲求を優先し、
今の苦しみを和らげるという、
目先の解決だけを考えた。

未来のことを考える余裕は無く、
今日をうまく切り抜けることだけに苦心した。

そうしないと、
自分自身を生かすことができなかった。

この世知辛い世の中で何とか生き抜く為に、
激流を上手く泳がねばならいと考えた。

彼にとって「上手く泳ぐ」とは、
強い水の流れに逆らず、
石や岩などの障害物に当たらないように、
回避し続けることだった。

激流を泳いで、
自分の目標するところに行こう、
という高尚なことなんて考えられない。

彼にとって重要なのは、
スイミングフォームが綺麗か、
体を傷つけたくないから、
いかに障害物を避けるかという
表面的なものだけだった。

だから彼は、
任意の場所を目標に定めることはできず、
同じようなところを意味もなく、
ぐるぐる廻って彷徨っているだけだ。

幼少から傷付いた心を持っていた彼は、
自分の体裁を守る術として、
うわべを重要視し、
何とかその場しのぎをして、
誤魔化して切り抜けることを身に付けた。

だから、
独身女性にアプローチされ、
自分の身のこなしが正しいと、
肯定されたと思い喜んだ。

過ちを冒した夜のことも、
自分で過ちだと認めたくなかったから、
自分が関係をコントロールしているつもりで、
そのままその女と交際を続けた。

その女に乗り換えるつもりはなかったけど、
自分を好いてくれるから、
取り敢えずキープしようと考えた。

その女から文句を言われたくなかったから、
自分から電話したり
泊まりの約束をしたりした。

その女が言う
「男前でカッコいい」とか、
「いつも若々しい」とか、
「筋肉が素敵」とかいう誉め言葉は、
その言葉以上に受け取った。

いつもは女王様のようにふるまっている
不倫相手女がそういうと、
とても価値があるものに思えた。

そして、
自分の妻が、
その女のように自分を崇めてくれないことを、
苦々しく思った。

自分の妻の感性が狂っている、
と判断していた。

そうやって、
不倫を成立させて、
自分の自尊心を補強しようとした。

だから、
複雑性PTSDの私の夫が不倫するのは、
必然だったと思う。

妻に不倫がバレて波乱が起こり、
さすがに「不倫はだめだ」
というのは承知したようだ。

しかしながら、
そもそも夫はこの不倫を、
不倫であると認識していなかった。

ただの男女のじゃれあいだと思っていた。

世間でヤンヤ言われている、
ワイドショーやお笑いで
ネタになっている不倫とは別のもので、
自分の方は、
ごく小さなことだと思い込んでいた。

だから、
複雑性PTSDが快方へ向かわないと、
私の夫はまた、
不倫という認識なく、
不倫してしまうのだと思う。