私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

夫がかつて不倫旅行をした京都に、トラウマがある。

夫と不倫相手女が唯一行った旅行は、
京都だった。

2人は京都での仕事関係の用事が重なったので、
夜に待ち合わせ、
1泊2日の京都旅行をしたのだ。

それだけでも私にとって辛いことだが、
私の夫は更に恐ろしいことを企てた。

1日目暇だった夫は、
太陽が高い時間帯だけ、
私を京都旅行に誘ったのだ。

要するに、
朝、私と夫は一緒に京都に向かい、
日が沈む前に私だけ自宅に帰した。

一方夫は夕方から仕事関係の用事をこなし、
夜、不倫相手女とホテルで落ち合い、
次の日はその女と京都観光をしたのだ。

私は、
不倫相手女が仕事をしている時間帯だけ、
夫の相手をさせられたということなのだ。

1人で観光するのが嫌だから、
わざわざ妻を連れていき、
日が暮れる頃、
もうオマエは用無しだから帰れ、
とばかりに突き返したということなのだ。

その夜、
夫は不倫相手女と2人でホテルに宿泊した。

子供は実家に預けていたので、
自宅に帰った私はひとり。
何も知らない私は1人で眠りについた。

……………
次の日私は、
仲良し夫婦数組と、
お昼からミニパーティーだった。

前日夕方→次の日夕方まで、
丸1日仕事だと夫に嘘をつかれた私は、
皆に「ダンナさんは?」
と聞かれる度に仕事だと答えた。

夜、パーティーがお開きになり帰宅すると、
夫が先に家で寛いでいた。
しかも沢山食い散らかして、
帰宅してから結構時間が経過している様子。

「そんなに早くに帰って来られたのなら、
ミニパーティーに来れば良かったのに。
夜まで帰って来られないって言ってたよね?」

そう私が言っても明確な返答は無かった。
……………

本当のところは、
2日目に不倫相手女と観光をしていた時、
その女が不倫特有の不満を言い出し、
それに気を悪くした夫は、
時間を切り上げて帰ってきたのだ。

そしてミニパーティーへは、
遅れて参加しようという気も起こらなかった、
ということなのだ。

オマエがうちの広報担当だから、
皆と仲良くやっといてくれ、
オレの出る幕じゃない、ということなのだ。

日々の生活のリアルな繋がりは軽んじて、
不倫相手女から気分を害されたことについて、
ひとり酒で圧し殺そうとしていたのだ。

………………
夫の不倫を知るまで、
あの京都旅行が、
こんなバカバカしいものだったということを、
私は全く気付いていなかった。

むしろ、
子供が居ない間に、
旅行に誘ってくれたことを嬉しく感じていた。

その旅行に誘ってくれる時や、
旅行の最中、
夫はいつものふてぶてしい感じでなく、
何だかソワソワして、
私を女扱いしている雰囲気だった。

だけどそれは、
不倫相手女との旅行という表面があり、
私との旅行はその裏面でしかなかった。

いつもと違う雰囲気の夫は、
不倫相手女とのことがあっての副産物
でしかなかった。

全てが判った後、
その出来事が私のトラウマの1つになった。

京都には何も恨みはない。
だけど、
本能的に避けたい場所になってしまった。

幼い頃から、
古の都として敬い憧れていたところは、
私の心のキズとなってしまった。

雄大な歴史から、
日本に住む人として感じる、
京都への誇りの気持ちを失いかけていた。

何も知らずに、
夫に誘われるまま、
心をうきうきさせてついて行った私が、
とても可哀想で不憫に思えた。

夫が不倫旅行をしていることを知らず、
ミニパーティーで、
「夫は仕事で参加できなくてゴメン」
と謝っていた私が、
バカらしくて仕方がなかった。

それでも、
この旅行で険悪になった夫と相手女は、
それできちんと別離できればまだよかった。

京都旅行をきっかけに別れ話をしたのに、
その2週間後、
私の夫はいつもの常宿を予約し、
その女に連絡を取った。

その女は「あの時別れたでしょ?」
と文句を言いながら
常宿に行く約束を交わした。

夫と不倫相手女は、
いつもこういう悶着を繰り返し、
10年近くも付き合っていた。

不倫行為に依存する悲しい男女。

そしてその犠牲者は、男の妻である私。
京都がトラウマになってしまった私。