私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

不倫した夫は、たぶん、複雑性PTSD

複雑性PTSDが、
世間でこんなに取り上げられたことに、
私は少し驚いている。

この病気が一般に認知されたのは、
比較的最近だと思っていたからだ。

ところで、
長年の不倫をしていた私の夫は、
おそらく「それ」だ。

夫の不倫を知ってから、
私はじっくり彼の発言や行動を観察したり、
物事に対する考え方について、
随分インタビューを重ねたりした。

同時に心理学や精神医学について、
独学だけど随分勉強した。

その中で、
一番手掛かりにさせてもらったのは、
「複雑性トラウマ・愛着・解離がわかる本」
著: アナベル・ゴンザレス
監訳: 大河原美以
という書籍だ。

そこから私が導き出した夫への診断が
複雑性PTSD」だ。

しかも、
自己愛性パーソナリティー障害と、
アルコール依存性のおまけ付きだ。

出会った頃から、
変わった人だなというのは
とても感じていた。

強く激しい発言や行動をするのに、
その裏で、
ひどく気の小さいところがあった。

気にするポイントは
酷くしつこく拘るのに、
気にしないポイントは
まるで見えていないかのようだった。

そういう極端な言動も、
お茶目なキャラでカバーされていたので、
「面白い人だなあ」と受け流して終った。

でもやっぱり変人に思えるところもあり、
「レアなパターンかも。
心理学の先生に研究してもらおうか?」
と冗談を言っていたのも事実だ。

そう感じた20年前、
夫の心を真剣に解明すればよかったのか、
と思うこともあるけど、
現実的にみて無理だった。

その頃は、
病んでいるとは到底思えなかった。

会社で受けるメンタルヘルス検査では、
毎年正常範囲内だった。

しかもその頃日本ではまだ、
複雑性PTSDの診断ができた医師は、
いなかったかもしれない。

そして随分時を経て、
私は夫の不倫発覚がトリガーとなり、
PTSDと中度のうつ病になった。

毎日何度も涙が溢れ、
気力や体力が削がれ、
希死念慮に覆い被された。

すぐ側で、
私のことを本気で助けようとしてくれる、
愛のある強い人が必要だった。

でも、
私のすぐ側にいた介助候補人は、
小さい頃からの心の傷を抱えた、
ある意味、
私よりも弱々しい人だった。

だから、
「消えてしまいたい」と
泣きじゃくる変わり果てた妻を見て、
大きな衝撃を食らってしまった。

心の中の処理がうまくできない夫は、
妻の病気を治す助けをするどころか、
側で見守ることさえも苦痛だった。

夫は呆然とするだけで動かないので、
私は自分で自分の病気の勉強をし、
自分で治療を進めた。

それと同時に、
明らかに普通の精神状態でない夫について、
病気に違いないと素人なりに研究した。

複雑性PTSDに辿り着いた。

その精神疾患の特徴を知り、
それまで
「どうしてこんな言動するんだろう?」
と不思議に思っていた夫のことが、
少しづつ理解出来るようになった。

私の病気を治す手助けが
満足にできない理由も解った。

解らなかったことが解ると、
自分の周りの濃霧が
少し薄くなったような気がしてきた。

夫への理解は、
私自身の病気治療に繋がったのだ。