私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

メッキで本性を隠している人(私の夫の場合)

私の夫は一見、頼もしい大人に見える。

私を始め周りの人は皆、
そうだと思い込んでいた。

でも実は、
とても弱々しい人間だったのだ。

本当は、
とても繊細で壊れやすく、
流されやすい。

でもそのままでは
世間の荒波に飲み込まれてしまう。

こう気付いた時、
強い心を育てるべきだった。
どんな波が来ても、
乗り越えられる人格を目指すべきだった。

しかし残念ながら、
夫はそういう手段を選ぶことができなかった。

彼に残された手段は、
弱い心をメッキでコーティングし、
強い男を演じるしかないと思った。

強く育つチャンスを失った彼の心は、
メッキに守られるしかなかった。

だけど荒波は、
年数を重ねる毎に当たりが激しくなる。

そしたら、
もっともっとメッキの層を重ねるしかなかった。

メッキはますます美しく輝き、
綺麗な装飾も施された。

荒波や暴風に負けないばかりか、
見た目も楽しく和ませるものに出来上がった。

しかしメッキで厚く被われた夫の心は、
空気の循環がうまくできず、
ドロドロに溶けてしまいそうだった。

そんな内情を知らないみんなは、
周りのメッキを見て、
いいねー、かっこいいねー、
とか言ってくれていた。

夫は、
人生はそんなものだと思っていた。

生きるのは大変だ、
楽しいって何だろう、
満たされているって何だろう。

自分の心を
深く感じることが出来なかった。

知らないから、
自分が普通ではないことが判らない。
これが普通だと思っていた。

夫の長年の不倫は、
そういう彼の弱さが育んだものだ。

会社の後輩に手を出してしまった。
しかも脅迫されている。
でも社内にばらす気配はない。
かっこいいといつも言ってくれる。
このまま秘密にしておけばいい。

メッキの中でドロドロになっている心は、
より甘さに偏るしかなかった。

でも、今は、
メッキが全部剥がされてしまった。
私が剥がしたのだ。

これまでのような生き方は、
彼にとって不幸だし、
何より不自然だったからだ。

まるで、
千と千尋の神隠し」に出てくる
カオナシ
のような正体の夫。

これから彼はどう在りたいのか、
どういう生き方をすべきだと考えるのか。

その答え次第では、
不倫相手女に返却するまでだ。