私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

「ワタシがいないとダメなのかな」と独身不倫女が言った

私の夫が不倫をしていたある日、
相手の女からメールでこう言われた。

「やっぱり貴方には、
ワタシがいないとダメなのかな…?」

おそらく私の夫は、
その女に仕事の弱音を吐いたのだろう。

夫と不倫相手女は元同僚だから、
グチの相手をしてもらいたかったのだ。

そこでその女は、
「貴方を支えているのはワタシなのね?
ワタシがいないと、
貴方はダメになってしまうんじゃないの?
貴方に必要なのは、
今の家族でなくワタシじゃないの?」
という意味を問いかけたのだ。

結局夫はその問いかけをスルーし、
その女はそれ以上の圧力は掛けなかった。

その点は、
その女は賢かったと言える。

そこでもっと問い詰めると、
私の夫は真正面から返答しないといけなくなる。

「オレを支えているの貴女ではない」
とNOを言うしか道はない。

なぜなら私の夫は、
そこでYESと言ったら、
本当にその女に飲み込まれてしまうことは
解っていたからだ。

貧弱な自己しか持っていない男にしては、
そのスルーは上出来だったかもしれない。

彼にとって、最大限の抵抗だ。

……………
その女が棲んでいるのは、
新しい水があまり流れてこない、濁った溜め池だ。

いつもは渓流にいる私の夫が、
荒い流れに疲れて、
時々迷い込むのがその溜め池。

「激しい流れは疲れるよ」

そう聞いたその女は得たりとばかりに言う。
「ワタシがいないとダメなのかな…?」

溜め池は水流が少ないからのんびりできるけど、
濁りはひどいしエサも小さい。

さすがに私の夫も、
そこは自分の居るべき場所でないことは解っている。

だからその女の戯言には無関心だった。

その女は、溜め池から出てくるべきだ。
渓流で戦うべきなのだ。

それをせずに、
濁った溜め池からワーワー文句を言っている。

ワタシだって本気をだせば、
急流でもうまく泳げるし、
美味しいエサを捕まえることもできるのよ!
と大口を叩くだけじゃなく、
体を張ってトライすべきだ。

きちんと体現して、
実行力のある人だということを、
示さなければならない。

しかし残念ながら、
夫の不倫相手女の発言は、
実現性が無い妄想ばかりだ。

その女は自分が側にいるだけで、
私の夫の心が癒されると、
本気で思っているのか?

側にいるだけで癒されるのは、
愛する子供とペットくらいだ。

だとしたらその女は、
誰かの子供になりたいのかもしれない。

そしてその親から、
「貴女がいるだけでいいのよ」
と優しく言われたいだけかもしれない。

私は、
その女の親子関係が、
悲しいものかもしれないと気付いてきた。