私の夫も、堂々たる「チカラワザ」信者
私の夫も、
不倫相手女と同じく「チカラワザ」信者だ。
もしかしたら、
不倫相手女より、
更に信心深いかもしれない。
その不倫相手女は、
自分の自尊心を保つべく、
好きな人と一緒に居たいが為に、
仕方なく「チカラワザ」に頼った節がある。
だけど私の夫は、
そんな葛藤の影は無く、
単なる「パワハラ」や「モラハラ」でしかない。
これまで私の夫は、
「チカラワザ」を
全面に押し出して生き延びてきた。
何とかこの方法で、
うまく世間を渡ることができていた。
自分の意見を通したい時は、
大声で罵るように発言する。
ダメなものはダメ。
イヤなものはイヤ。
理由や理論は関係ない。
子育ても「チカラワザ」で
世の中の理不尽さを教えてやる!
オレがそうだと言っているから、
黙って従え!!
……………
不倫相手女との関係も「チカラワザ」
アイツから不倫に誘われた。
職場にはバラさないようだ。
遊びのひとつとしてキープしよう。
アイツは、オレのことが大好きで離れられない。
オレに従うから、
都合よくコントロールして遊ぼう。
私の夫は、
その不倫相手女のことを、
ひとりの人間として見ていなかった。
勝手に向こうから飛び込んできた蛙。
こちらの庭池で泳がせておこう。
暇な時の遊び相手としておいておこう。
逃げないように、時々エサを撒けばいい。
惚れられたが勝ち。
オマエはオレの思うように動け。
そうやって私の夫は、
意図的にその女をコントロールしていた。
「チカラワザ」を駆使していた。
…しかしそれは夫の幻想だった。
コントロールしていたのは、
実は不倫相手女の方だったのだ。
私の夫は「チカラワザ」で勝ったつもりだったが、
実際は「チカラワザ」で負けていた。
ふたりの不倫は、
「チカラワザ」のぶつかり合いだった。
食うか食われるかの戦いだった。
多分先に「チカラワザ」を使ったのは、
私の夫だろう。
自分が食い物にされそうになっている
と感じたその女は、
自己防衛策として、
「チカラワザ」を使うことにしたのかもしれない。
しかし私の夫は、
途中で劣勢に転じたことを気付いていなかった。
自分が小馬鹿にしている女と、
関係を続けている。
関係を終わらせたいような気がするけど、
怒らせると面倒だから、
今のままがベストな選択だ。
私の夫はこの考えを正当化するため、
自分が勝っている、
この不倫は自分がコントロールしていると、
自身に思い込ませていた。
自分で自分に暗示をかける。
ダブルバインドの出来上がりだった。
……………
そして、北風と太陽…
しかしここの登場人物には、
北風しかいない。
ふたりとも、
人間に対する愛や信頼や尊敬がない。
まさに似た者同士。
「チカラワザ」で得られる幸福感は、
表面的で冷たく一時的なものでしかない、
ということを知らない人達だ。
とても悲しい人達なのだ。