私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

妻と不倫相手をまとめて落胆させた、夫のひとこと

私の夫は不倫相手女に対して、
「オマエが一番!」
というひとことを放った。

その言葉は、
その女と、妻である私へ、
ふたりまとめて大きな打撃を与えた。

不倫相手女は、
「遊び相手のオンナの中では、オマエが一番」
と言われたと思った。

一方、妻である私は、
「オレの最愛の人は、不倫相手女だ」
と明言したと思った。

ふたりの女は共に、
「その男が一番愛しているのは自分ではない」
という風に理解をした。

だからふたりの女はどちらとも、
失望して落胆したのだが、
その度合いは大きく違う。

不倫相手女にとってその発言は、
予想の範疇だったはずだ。

それまでの自分への雑な扱いから、
それくらいの見当はつけていたはずだ。

逆に言うと、
その男から愛されていないのを解っていたから、
脅迫して繋ぎ止めていたのだ。

一方私はそのひとことで、
夫の長年に渡る不倫を知り、
夫の最愛の人は不倫相手女だと突きつけられ、
大きなショックを受けた。

そのショックは、
稲妻のように突然降りかかり、
しかも強烈過ぎて、
PTSDになってしまった。

夫の真意からみれば、
私の解釈は間違っている。
早とちりだ。
不倫相手女の解釈が正解だ。

私の夫は、
不倫相手女はあくまで、
「遊びの女達の巻」
の登場人物だと位置付けていた。
その中で、
一番遊ぶのに都合がいいのは誰か?
という視点でランク付けに興じていた。

そして本妻は、
「本当の家族の巻」
の登場人物だ。

全く別の巻物だ。

「本当の家族の巻」の巻物は、
その男の心の奥に仕舞われ、
他人に触られないように厳重保管されていた。

混同していないつもりだった。

だけど、
現代日本社会の
一般的解釈ではそうならない。

ひとりの人間の巻物は、ひとつのはずだ。

そのひとつの巻物の中に、
あれやこれやと、
色々なものが介在し、
干渉し、
関わり合って、
ひとつの物語になっているはずだ。

私はそのように、
ごく一般的な解釈をしたから
ショックを受けたのだ。

素直な気持ちで、
夫を信頼しているという前提で読んだから、
あれほどのショックを受けたのだ。

夫が長年してきたことは、
許しがたいことばかりだ。

だけど、
ゆっくり考察を深めたり、
今の夫の良い変化をみたりすると、
私も次に進む努力をしないと…
と思えるようになってきた。

しかし…
そこで邪魔をするのが、
あの時罹患した
PTSDが引き金になった「うつ病」なのだ。

あの時、
突然の大きなショックを受けなければ、
PTSDにならなかったかもしれない。

PTSDにならなければ、
うつ病にならなかったかもしれない。

うつ病にならなければ、
もっと早く心の切り替えができて、
時間を無駄にしなかったかもしれない。

………………………………
私の夫は、
本当に凄いことを成し遂げた。

たったひとことで、
不倫相手女を落胆させ、
妻の心を殺した。

とても鮮やかで鋭い一撃だった。

妻がその言葉を目撃するのは、
もちろん計算外だっただろう。
全て内緒を通すつもりだったのだから。

でも結果として、
妻である私が、
精神を患ったというのは事実だ。

その患いが、
不倫騒動で崩れた諸々の再建の邪魔をしている、
というのは紛れもない事実なのだ。