私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

ASD(急性ストレス障害)の不倫夫と話ができない

私の夫は、
妻である私から不倫の顛末を尋ねられる度、
眉間にシワを寄せ、
頭をうなだれ、
ボーッとするようになった。

不明な点を残したくない私は、
判らないこと、
理解できないことを、
細かく聞きたかった。

でも、
事情聴取したい相手は、
明らかに精神状態が不安定になってしまった。

私は、
自分の精神を安定させたくて聞いているのに、
それによって、
夫の精神が不安定になってしまった。

夫がうつむいて黙り込む度に、
「それじゃ何も進まないよ!」
と私は腹をたてるのだけど、
夫は「ごめん…」と、
虚ろな目で呟くだけだった。

まるで、
ワケも話さず泣きじゃくる子供と一緒だ。

「どうしたの?
何があったか話して。
話してくれないと解決できないよ?」
と言いたくなるような、
泣いてばかりのボクちゃんと一緒だ。

そんな子供に対し、
鋭くミスを指摘し、
罵倒するつもりは無い。

困ったことが起きたから、
それを早く解決させる為に、
事情を知りたいだけなのだ。

だけど、
何も話してくれないから、
どうすることもできない。

夫はもちろん、もう小さな子供ではない。
白髪交じりの立派なオジサンだ。

仕事でミスをした時も、
こんな状態になってもいいと思っているのか?
夫に問いたかった。

普段の夫は仕事に厳しい人で、
気持ちの甘い人を毛嫌いしている。

「甘ったれるな!
早くリカバリーしろ!」
そういう人にいつも悪態をついていた。

でもその時の夫は、
まさに夫が毛嫌いしてきた甘い人、
そのものだ。

私の夫は、
自分で起こしたトラブルが、
予想だにしない結果を引き起こし、
それが大きなストレスとなり、
事実に対処できないでいるのだ。

凶悪事件を起こした犯人が、
精神鑑定で「正常ではない」という判定になり、
極刑を免れた、
という話を耳にすることがある。

精神をきたしていた事が、
刑罰の軽減を招くというパターンだ。

しかし、
その「精神が正常ではない」
というのは、
犯行時ではなく、
犯行後かもしれない。

犯行時は正常だったが、
犯行後、
自分が起こした事件の惨さを見て、
パニックになり、
大きなストレスが生まれ、
精神を病むことになったのかもしれない。

精神鑑定を犯行前にしていないので、
犯行時に正常かどうかなんて、
本当は判らないのではないか。

私の夫の姿を眺めていると、
そういうこともあるかもしれない、
と思える。

自分の言動がどういう結果に結び付くのか、
予想できなかっただけの、
思慮が浅くストレス耐性が貧弱な、
ただの幼稚な人、
ということなのかもしれない。