私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

男から愛されていないことを理解していた、独身不倫女

私の夫と不倫していた独身女は、
私の弁護士から、
慰謝料支払いについて説得を受けていた。

なかなか首を縦に振らない相手女に、
弁護士は言った。

「奥様は、
夫と貴女が深く愛し合っていたと思ったから、
酷く傷つき、
精神を病むまでになったのですよ」

それを聞いた相手女は、
一度、
何か主張したい素振りをした後、
その言葉を飲み込んだように見えたという。

普通に考えると、
その弁護士の発言は、
不倫女にとって嬉しい話のはずだ。

なぜならその女の不倫目的は、
その男と愛し合い、
妻の上のポジションに居座り、
優越感に浸ることのはず。

やった!
妻に勝った!
私の魅力で男が骨抜きになっていたことを、
妻が認めた!
事実上の敗北宣言ということよね!

そんな感じで喜ぶと、
私も弁護士も予想していた。

不憫な妻に、
お金を恵んでやろうではないか!

という、得意げな表情を期待した。

だけど実際の反応は、
異議アリという様子なのだ。

妻が酷く傷ついて病気になったのは、
医師の診断書が動かぬ証拠だから、
そこには異議は立てられない。

だとすれば、
異議があるのは「ふたりが愛し合っていた」
という箇所しかない。

本当は、
「そもそも男は私を愛していなかったから、
奥さんの実害は多くない。
だから高額な慰謝料を払う必要が無い」
と言いたかったのだろう。

だけど不倫相手女は、
その主張を出す直前に取り下げた。

なぜなら、それを言ってしまえば、
どうして愛してなかったと思うのですか??
となるからだ。

「だって、私に心を開いていなかったと思うから」
なぜそう思うのですか?

「結婚は無いと断られたから」
先が見えないのにどうして続けたのですか?

「電話やデートが途絶えなかったから」
どちらから誘うことが多かったのでしょうか?

「男からの連絡が途絶えたら、
私は不倫をバラすと脅していたので、
男が気を遣ってコンスタントに誘っていたと思う。
だから、どちらが多いとはいえない」

…というように、
相手女の別の罪である「脅迫罪」の自白に
繋がってしまうのだ。

しかも、
脅迫罪は立派な犯罪だ。

私の夫が被害届を出したら、
その女は逮捕される可能性がある。

不倫慰謝料どころの話じゃなくなるのだ。

……………
不倫相手女は、
私の夫から愛されていなかったことを、
しっかり理解していたのだ。

でも、
ここまでの考察ができたのは、
実は、
慰謝料と誓約書のゴタゴタが終わった後、
約半年後。

なぜあの時、
不倫相手女が何か言いたそうだったのか。

その謎が解かれるまで、
だいぶ月日がかかってしまった。

そしてその謎が解けた時…

女からの脅迫に負け、
奴隷と化していた夫のひ弱な人間性が、
ユラユラと浮かび上がってきたのだ。