私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

不倫沼から脱出した夫

私の夫は、
自分がしていた不貞関係から、
自力で脱出できないでいた。

その女との関係はストレスだったけど、
穏便に終わらせる方法が分からず、
抗うようなパワーも無いから、
継続させるしか道は無かった。

だけどある日、
妻である私に不倫がバレた。
決定的な証拠が出たのだ。

私はその夜、夫に詰め寄った。
「今からその女に電話して、
その場で別離を確定させて」と。

夫は不倫の事実を否定し、
電話するのもイヤだと拒否したが、
私は私の主張を絶対に譲らなかった。

「貴方の選択肢は2つ。
すぐさまその女に電話して別れるか、
それとも私と別れるか」

夫は今はイヤだ、
今日は遅いから明日電話しておく、
と顔を強ばらせながら断ろうとする。

でも私は絶対に譲らなかった。

今まで散々大目にみて譲歩した挙げ句、
こんなことになったのだ。

ここが一番の勝負時だ。

だから絶対に譲れない。

そしたら夫はしぶしぶ電話した。

「妻にバレた。そういうことなので…」

電話相手のその女は、
いくらか何かしゃべっているようだったけど、
私の夫は、
それくらいの言葉しか発しなかった。

3分くらいのやり取りで、
10年近くの不倫はとりあえず終わった。

…………………………
夫は、
その女と縁を切ろうとすることは、
更なるトラブルを引き起こすと考え、
とても警戒していた。

「変なことすると
社内不倫を会社にバラすよ!
そしたら妻にもバレるよ!」
と脅されていた。

しかし妻にバレてしまった今となっては、
不倫相手女を切るしか道は無かった。

夫にとっては、
一番恐れていたことが起きてしまったのだ。
…………………………

そうやって私の夫は、
長年浸かっていた不倫沼から、
妻である私の手で引き揚げられた。

引き揚げられる直前、
手足をバタバタさせて少し抵抗したけど、
「この手を離していいの?」と聞くと、
うなだれて全体重を委ねてきた。

夫はやっと沼からあがり、
上陸を果たすことができた。

汚い沼に浸かってたから、
臭い匂いが体に染み付いていた。

おかしな浮力に支えられていたから、
筋力が無くフラフラだ。

沼に身を隠していた時は気付かなかったけど、
私の夫はしょうもない中年男だった。