私は一度死んだことがある

夫の不倫をきっかけに、いろいろな事をいろいろな角度から考える

夫の勤務先近くで働きだした、不倫相手女

夫とその女、
不倫真っ最中の頃の話だ。

その女は、
「新しい分野にチャレンジしたい」
という理由で、
とある企業の一員となった。

その企業は、
私の夫の勤務先のすぐ近く、
距離にして200m程のところに所在している。
目と鼻の先だ。

いくつかの区から成立した、
まあまあの規模の都市だ。
端から端まで行くと、
数10kmもあるような都市。

そんな大きな都市の中、
お互いの勤務地が、
たった200mしか離れていないのだ。

偶然であるわけない。

私は、
その女が、
そんな近くで働くことにした目論見が、
3つあることにピンときた。

……………

1つ目は、
夫との不倫をより楽しむ為。

勤務地が近くだとすぐ会えるから、
ランチはもちろん、
仕事後も会いやすくやなる。

……………

2つ目は、
以前の上司や同僚への当て付けの為。

かつてその女は、
夫と同じ会社にいて、
そこで社内不倫を始めた。

結局、社内不倫はバレなかったが、
仕事上の振る舞いが会社の基準に合わず、
その女は退職に追い込まれた。

だからその女は、
かつての会社の人達に恨みを抱いた。

自分は頑張ったつもりだったのに、
適正な評価を貰えなかったという不服があった。

そんな人達に、
今の立派な社会人ぶりを見せたかった。

オマエ達が捨てたこの私は、
今、別の優良企業で重用されているよ。

オマエ達は私を正当に評価できなかったけど、
今の会社はできているよ。

私という立派な人材の損失を、
はっきり気付きなさい。

そういうことを表明して、
認識させたかったはずだ。

……………

3つ目は、
その女が、
私の夫と付き合っていることを、
かつての会社の人達と、
今の会社の人達に知らせる為。

その女は、
自分に素敵な彼氏がいることを、
みんなに知らせたかった。

社内で評判高い妻がいるその男が
自分と付き合っていることを、
かつての同僚に知られたかった。

今の会社の同僚にも、
恋愛してリア充な様子を見せたかった。

荒んだ実生活を、
少しでもカモフラージュしたかった。

……………

実は、
3つ目の理由は、
1つ目の理由と相反する。

1つ目は不倫を続投する為だけど、
3つ目は他人に知らせる意図があるので、
不倫を終わらせてしまう危険がある。

かつての同僚に知られることは、
妻に知られることに繋がる。
そうなれば、
不倫終了だということを理解しているはずだ。

その女は、
不倫をひっそりと続けたい反面、
公表してオオゴトにしたかった。

自分が、
その男とその妻に対し、
とても影響力があるということを感じたかった。

その女は、
その男との不倫が終わることよりも、
「私は生きている」
「私はここにいる」
という感覚を得ることが、
一番重要だったのだろう。